JBA JOURNAL

2019 Spring

この記事は2019年5月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

フォロワーとしての立ち位置で
新しい課題に対応できる
経理財務でありたい。

田端信也氏Shinya Tabata 株式会社シグマクシス
取締役 CFO

1985 年石川島播磨重工業株式会社入社。89 年日本IBM 株式会社入社、98 年同社財務・資本管理担当。2000 年IBMCorporation Treasury Senior Treasury Professional、02 年IBM Asia Pacific Corporate Development Japan 担当、04 年日本IBM 株式会社グローバルビジネスサービス事業計画管理担当、06 年同社グローバルビジネスサービス事業計画管理担当 兼IBM ビジネスコンサルティングサービス株式会社執行役員CFO、同年日本IBM 株式会社グローバルファイナンシング事業管理担当、08 年9 月株式会社シグマクシスCFO 兼 経営企画部・財務部ダイレクター、13 年9 月同社取締役CFO(現任)。

経理財務の基本と最先端の経験を新しい会社で活かす

―ご経歴を教えてください。

1985年に石川島播磨重工業に入社し、航空宇宙事業本部に配属となり、管理部門で工場の原価計算を経験しました。4年間、個別原価計算や標準原価計算に携わり、経理の基本を身につけることができました。
89年に日本IBMに移り、当時、日本企業では体験できないような最先端の管理手法を学ぶ様々な機会を得ました。最初の仕事はPLの作成でした。実績のPLではなく、事業計画に基づく予測PLを作成し、実績と比較して再分析し、見通しを立てるという仕事です。PLの次は、BSを同様に行いました。両方を経験したことでPLとBSのつながりがよくわかりました。
その後、財務に移り、資金管理に携わりました。自己資本と借入の比率も目標数値が決められており、その目標に沿った資金管理に尽力しました。「子会社の資金を自動的に吸い上げて翌日子会社に戻す」という資金を集中管理する仕組みを銀行につくってもらったり、IBMが持っている金融センターに売掛金のファクタリングを行うなど、金融の最先端のテクニックを日本にいながらにして経験しました。
次に配属となったのが、コーポレートデベロップメントという、M&Aや子会社設立の専門部門です。M&Aの候補の会社を探し、見つけたらデューデリをして、買収して統合する。同社は会社を評価する際のフィナンシャルバリュエーションのモデルを持っていました。目的や効果を文字だけで表現するのでなく、数字的にモデリングすることが求められた。ファイナンシャルモデルをつくる知恵は、シグマクシスに入ったときも非常に立ちました。

―シグマクシスには設立と同時に移られていますね。

08年の9月。入ったとたんにリーマンショックに直面しました。我々、経理財務部門は会社をより長く生き続けさせるために、お金をどれだけ長くもたせるかを考えなければなりません。リース部門で学んだ知恵を使って、あらゆるものをリースにしました。銀行借入は難しくても、例えば事務所の造作にかかった3億円を、3年程度の延払いにするリース契約に変えてもらう。売掛金の回収サイトを短くするために、支払い条件は毎月なら翌月払いにしてもらう。こうした努力を続けながらも、2009年12月には資金が枯渇するという見通しでした。
社長を中心に増資の話をお願いにいった際、非常に役立ったのが、前述のファイナンシャルモデルの知識でした。具体的な数字を挙げた計画を提示して、追加増資していただけた。その後、全社一丸となって「この苦境を乗り越えねばならない」という結束によって、予想通り数字を達成して、2013年のマザーズ上場にこぎつけることができた。人はモチベートされることで、大きくモメンタムが変わってくることを実感しました。

AIが得意なこと、人でなければできないこと

―経理財務は少数精鋭だとか。

バックオフィス部門の比重を軽くするのが会社の方針でもあり、設立当初は社員数約240名中、バックオフィス部門は30名強でした。400名を越えるコンサルタントを抱える今でも、40名はいません。ちなみに経理財務部門は総勢4名の少数精鋭です。少数精鋭でいくためには、それなりの仕組みが必要で、プロセスをきちんと決めると同時にプロセスをデジタル化して、紙をできるだけ使わないオペレーションを徹底しています。
経理財務部門が少数精鋭でいける要因の一つに財務会計と管理会計のシステムの切り分けがあります。日本の会社は、経営判断を行うためのKPIを経理システム(財務会計)からとろうとします。財務会計の重要なポイントは1円たりとも間違えてはならないことです。しかし、経営判断ではそうした精度は求められない。同じシステムの中で異なった二つの目的を果たそうとするために、経理システムに大きな負荷がかかります。我々は、財務会計は財務会計だけのクラウドの会計システムを使い、経営管理は別のシステムを使って行う。財務会計を行うには、今のクラウドのシステムは十分な機能を持っています。しかも、クラウドサービスのコストは月5万円です。不必要なものは使わない、行わないことを全社で徹底しています。

―今後、求められる経理財務像は?

デジタル化が進みAI活用等が普通になったとき、現時点で行っている既存の経理財務の仕事はなくなると思います。そのとき、人間に残された仕事は、新しい課題への対応を考えることでしょう。過去の知識の集積に事例をぶつけて返してくるのがAIの本質です。例えば、GAFA等は「データがお金の源泉」になっているのに、会計では"データ"をあらわす手段がありません。当社で言えば、400人の優秀なコンサルタントはBSのどこにも載っていない。これらは認識しなくてよいのか、という問題がでてきます。数値化することはアクションにつながるので、見えない資産の見える化は新しい論点だと思います。そうした新しい部分は会計だけを行っていても答えは出てこない。自ら発見し、新しく考えていくことが今後の経理財務の人材に求められる。そうなると専門知識はもちろんですが、幅広い知識が必要になります。そうした知識を身につけるには、部門間に落ちてしまう課題を自ら拾い、解決に導き、最後までやりきる。その繰り返しが自分の知識を増やしていくことになるでしょう。
ルール違反を「ダメなことはダメ」と言うのは経理財務の大きな役割ですが、それはAIが最も得意とする分野でもあります。もう少しすれば、それらはすべて機械がやるようになると思っています。人間が行うのは、今までになかったことに対してアドバイスできるような役割です。フォロワー的な立ち位置でそうした役割を果たすことが求められるのだと思います。

―本日はありがとうございました。

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