JBA JOURNAL

2019 Summer

この記事は 2019 年 8 月発行の「 JBA JOURNAL 」に掲載されたものです。内容及びプロフィール 等は掲載当時の情報となります。

“スピード”と“質”に対応できる
経理部門を目指して。

寺下和良氏

寺下和良氏Kazuyoshi Terashita 日本特殊陶業株式会社
執行役員 経営管理本部副本部長 経理部長

1969 年生まれ。三重県出身。1992 年名古屋大学経済学部経済学科卒業。同年日本特殊陶業株式会社入社。人事部配属を経て経理部へ異動。ヨーロッパ特殊陶業(現フランスNGK スパークプラグ)出向等を経て、2017 年より経営管理本部経理部長(現任)。

現場を知らずして、経理は前に進まない

―ご経歴を教えてください。

大学卒業後日本特殊陶業に入社しました。入社後6年ほど人事部に在籍し、人事関係のITシステムの構築、労基法関連、人財育成(研修)を担当した後、経理部に配属になりました。経理で最初に配属されたのが、自動車関連のセンサ部品の事業部損益(収益管理)と原価計算の担当でした。当社では経理部の管理会計部門の中に原価計算部隊が入っています。これを約2年やらせてもらった後、財務部門に移って3年ほど外為、貿易を担当しました。当社の場合、輸出比率が当時から売上の約8割を占めています。当時は年額2000億円規模でしたが、月にして100億円を超える輸出の為替予約や入金管理が主な仕事でした。その後、フランスの工場に約4年間出向しました。日本人の出向者は製造エンジニアの工場長と私の2人だけだったので、経理も含めて人事、総務の他ロジスティクスなどアドミ業務全般を担当しました。
帰国後、管理会計部門の課長となり、2013年頃には、IFRS適用に備えて、決算早期化と決算期の統一と固定資産(設備)の耐用年数統一まで行いました。その後、連結や開示の財務畑を歩んで現在に至っています。IFRS適用への取組は、東日本大震災の後、延期になりましたが、今また早期適用に向けて動いています。決算期の統一と決算早期化はそれなりに負担があり、やっていてよかったと思っています。

―経理財務部門の面白みは?

我々は基本的に事業部門に対するサービス部門であると同時に、経営トップに直接レポートして全社的な判断となる材料を出す、ガバナンスに貢献する部門という2つの役割を担っています。この2つのバランスをとりながら仕事ができるのが、経理部門の大きな面白みです。特に1つの事業部に担当者(新入社員から10年目のスタッフ)を1人つけますから、若手は非常に鍛えられる。彼らは仕事のレポートを経理部内の上長である主任や課長に提出すると同時に、事業部門では課長や部長、場合によっては役員に提出します。上位役職者との接点があって、自分の提出したレポートを経営判断の材料に使われる。重い仕事であると同時に経営に触れる貴重な経験だと思っています。
私自身も実感したことですが、経理部門が直接事業部門の原価管理を担当しているから、現場を知らざるを得ないし、自分なりの分析、仮説の発信を求められます。経理部には社内のあらゆる情報、例えば、客先別の数量の増減や単価の動き、原材料の動きといったデータがすべて集まってきます。どこで、どれだけ利益が出ているか、原価と売価のマッチングなどのデータから、大局観をもって事業全体を見渡すことができます。現場、製品、ビジネスモデルを理解しているから、データも生きた数字として見えてくる。現場を知らずして経理は前に進めません。

経理財務パーソンに不可欠な3つの力

―経理財務パーソンに求められる能力は?

1つ目は、数字をつくる能力はもちろん、分析して自分なりの仮説をもってコメントする能力が大事だと思います。事業部にとって耳が痛いことも、説得力をもってレポートできるような発信力が、ますます求められていると思います。
2つ目は、関連する周辺領域の知識を自ら興味をもって増やし、幅広い範囲を視野に入れることを心がけること。
3つ目に、会社の経理以外の情報をいち早くつかんだ時、経理にどんなインパクトが出るか、経理に出たインパクトがほかにどう影響するかを考えられる人財になってほしいと思います。ビジネスや商流の変化で自社の決算がどう変わるか、あるいは会計基準が変わることでビジネスがどう変わるかを、日ごろからシミュレーションして、自分事としてどこまで理解できるか。それが、変化への対応力へとつながると思います。
経理部門としては、ファイナンスとアカウンティングを意識的にローテーションして、資本政策や資金繰りから管理会計・予算までできる人財を増やしていきたい。ROICのような概念が出てくると両方に影響してくるので、そうした成長を各メンバーに求めていきたいと思います。

―人財育成の留意点は?

当社は人事制度が比較的柔軟になり、本来の滞留年数を1年短縮して昇格できる飛び級のような制度があります。そうしたものを使って、能力のある人には早めに少し重めの負荷をかけてストレッチさせていこうと思っています。逆にじっくりとやりたいタイプの人には別のコースを用意してあげたい。経理には裏方としての仕事が必ずあります。表の業務でスター的な人財を育てると同時に、裏方として着実に仕事をしている人をどう評価するか。地道な仕事ができる人財をどれだけつくっていけるかも大事だと思っています。

情報を素速くアップする体制づくり

―今後の課題は?

情報を速くあげられるような体制づくりが最大の課題です。トップからも「粒度・精度は問わないので、2営業日目くらいに連結での業績結果が見たい」というリクエストがきます。精緻なものをまとめて出すのではなく、「クイックなものをいくつも出してほしい」という経営層の要望に応えられるような設計にしていきたい。スピード感をもって速報を出し、その後深掘りしていく。スピードと質の異なるレポートをいくつも用意して、細やかに対応していかなければならないと思っています。

―本日はありがとうございました。

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