JBA JOURNAL

2020 Winter

この記事は2020年2月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

専門性から一歩踏み出した
ところに会社が求める
価値が見える。

五代儀直美氏Naomi Iyogi 株式会社Orchestra Holdings
取締役CFO 公認会計士

早稲田大学政治経済学部卒業。野村證券株式会社勤務を経て、EY トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社、EY 新日本有限責任監査法人にて企業買収、企業再生等に関わるアドバイザリー業務および国内外の大手金融機関を中心とした会計監査業務等に従事。その後ゴールドマン・サックス証券株式会社にて主にプリンシパルインベストメント事業に関わる財務会計業務に携わる。2014 年、株式会社デジタルアイデンティティ(現:株式会社Orchestra Holdings)取締役CFO に就任。公認会計士、米国公認会計士。

当事者だから感じられるスピード感、責任感、達成感

―ご経歴を教えてください。

新卒で野村証券に入りました。企業を上場させて市場に出していく仕事にとても惹かれたからです。入社してみるとよくある話で、ほぼ全員営業という状況で1年弱で退社し、もともと財務に興味があったこともあり、USCPA(米国公認会計士)を取得し、EY 新日本監査法人のグループ会社であるEY トランザクション・アドバイザリー・サービスで会計コンサルに携わりました。不良債権処理が加速していた頃でしたので、数多くの不良債権処分や再生案件のデューデリジェンスやバリュエーションなどを手がけました。こうした実務を早期に経験できたことは今から思うとありがたかったと思います。機会には恵まれましたが、ベースとなる知識の至らなさを痛感してもいました。退職して約10カ月、会計を勉強する一つの手段として日本の公認会計士試験に専念しました。資格を取得して、監査法人に入所したのは、ちょうど前職を辞して1年経った頃でした。
監査法人では、証券会社の監査チームに配属されて野村證券やリーマンブラザーズ等、大手金融機関の監査に携わりました。特別目的会社(SPC)を活用したプライベートエクイティ投資など、複雑なストラクチャーを使った投資が盛んで、そうした特殊な領域を見る経験をしました。次の転職先のゴールドマンではそうした投資を行う部署の経理財務部門に配属されました。ゴールドマンは案件数が多く、いろいろなタイプのストラクチャーの検討やSPCの連結の検討など、ビジネスの最前線にいるからできる、貴重な経験をさせてもらいました。経理だけでなくフロントのバンカーや税務、法務、コンプライアンスなどが一緒に議論していく中で、他の領域の視点や検討ポイントに触れることで、「自分の専門領域以外もポイントを押さえておかなければ仕事を進めることができない」ことを体感し、それぞれの役割の大切さを実感できたのは大きかったと思います。

―そこで、感じられた経理財務の仕事の面白み、大切さは?

自分のアウトプットが直接、会社のビジネスに直結することに非常にやりがいを感じました。例えばリスクの洗い出しをするときも、将来的にその取引を危ういものにするような見逃しがないよう責任感をひしひしと感じました。当事者ならではのスピード感、責任感、達成感といった喜びが私にとっては大きかったですね。

会社の成長と共に変化する柔軟性を持つく

―現職に就かれたきっかけは?

2014年に野村證券の同期会で、弊社の中村慶郎(社長)から、「上場を目指していて、CFO人材を探している」と声をかけられたのがきっかけでした。ゴールドマンよりもさらにビジネスに近いところで手触り感をもって仕事がしたい、自分の会計的な知見や経験をビジネスに直接貢献できればもっと面白いであろうとは思っていましたが、今までの人生の中で登場してこなかった選択肢の提示でした。中村の話を聞いているうちに、「そういう世界もあるのか」と思い、なかなか経験できないであろう会社を上場させることへの純粋な好奇心も働いて、管理部門の統括責任者としての役目を担わせていただくことになりました。
入社時の状況は、上場前のベンチャーではよく聞く話ではありますが、従業員は60名程度で、管理部門は1人いるかどうかの状態でした。16年の上場時は4名で乗り切りました。今は従業員300名弱、管理部門は10名規模になっています。

―成長のスピードが凄いですね。

売上高も15年の約36億円から3年後の18年には約72億円に、利益は約8000万円から、5億円弱に伸びています。
弊社のようにかなりの勢いで成長している会社では、事業の内容もポートフォリオも刻々と変わり、人員も組織も大きくなっていきます。それに合わせて経理財務も柔軟に体制を変えていく必要があります。規模が小さいうちは必要最低限の中で回していく。会社が成長していくに従って管理体制を強化していく中で、必要に応じて体制を整えていくフレキシビリティが、組織にも個々人にも求められています。変化を見ながら、常に対応していく視点をもっていなければなりません。

―経理財務に求められる資質は?

専門性や正確性だけでなく、少し視野を広げると、会社が意識している価値が見えてきます。単純作業が自動化していく中では、そうした視点を持つことが必須になると思います。
弊社のようなスタートアップ企業ということで言うならば、会計の知識だけでなくリーダーシップや巻き込み力が求められます。業務フローを改善する力やソフトスキルも重要です。
AIによる経理財務の仕事への影響がここ数年叫ばれていますが、データを活用するための体制整備がもうしばらくは重要だと思います。そのためにはデータを活用できる体制にする力、つまり全体像を理解して、必要なデータを把握して、効率的にデータを集めてくるなどの力が必要です。会計の知識に加えて、テクノロジーやフロー設計などITのナレッジも含めたスキルが求められますね。

「逃げない」、「見て見ぬふりをしない」をモットーに

―モットーとしていることは?

「逃げない」「見て見ぬふりをしない」ということは意識しています。例えば、管理部門を掌握する立場にいますから、専門領域以外の仕事もたくさんあります。担当者が手に負えないことは専門外でも基本的には自分の責任で処理する、担当者がいなくなっても自分が前面に出てやり切るなど、自分の責任の範囲内のことからは絶対に逃げないと常に意識しています。

――最後に読者にメッセージを。

経理財務は専門性が高いがゆえに専門性の追求しがいのある仕事です。そこから一歩踏み出して、周辺領域に取り組める機会があれば、それは別の視点が持てたり、経営の考え方が分かるようになったり、その後の自分の経理財務の仕事に活かせる好循環が生まれる絶好のチャンスでもあります。自分の強みを持ちながら、周辺領域にもチャレンジしていただきたいと思います。

―本日はありがとうございました。

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