トピックス

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2021 August

この記事は2021年8月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

柔軟性と寛容性を携えながら、
製薬会社としての使命を
果たしたい。

陳若彧氏

陳若彧氏Ruoyu Chen

株式会社ジーエヌアイグループ
財務経理部長

中国天津市生まれ。三菱UFJ リサーチ&コンサルティング、アーサーアンダーセン、BDO インターナショナル等のコンサルティングファームと監査法人での経験を活かし、2014 年より株式会社ジーエヌアイグループへ参画。連結決算、予算管理、税務、資金調達、M & A 等、財務経理業務をリード。京都大学経済学修士。米国公認会計士。

社会的価値が明確な製薬業界への転身

―ご経歴を教えてください。

学生の交換留学のプログラムで来日して神戸大学と京都大学大学院等で学びました。卒業後もずっと日本で仕事をして、来日して30年になります。最初はコンサルティングファームで企業の経営戦略に係るコンサルティングを経験。その後監査法人のアーサーアンダーセンに移り、財務会計関連のコンサルティングに携わったのち、米国公認会計士を取得してからBDOインターナショナルの日本メンバーファームで監査業務に従事しました。2014年にご縁があって、GNIグループ(以下GNI)に入社しました。私にとっては初めての事業会社でしたが、とてもやりがいのある会社に入ったと思っています。
どんなビジネスも社会と顧客に価値を提供することで成り立っていますが、製薬業は提供している価値が、「病気を治し、人命を救う」と極めて明確です。中国市場でGNIは、Etuaryという新薬を製造販売しており、これは特発性肺線維症という難病に対する治療薬です。これまで治療方法のない病気でしたから、患者様やご家族から非常に喜ばれました。そういう患者様たちのお気持ちを知るにつけ、とても嬉しくやりがいをいただいています。

―独自開発された?

日本では塩野義が同じ薬を販売していますが、中国市場で販売している薬は、弊社が独自で開発から治験まで行いました。創薬は大変時間とコストがかかりますから、ジョイントベンチャーや共同開発が多いことは事実です。

―中国・米国・香港とグローバル展開されています。

GNIは創業2001年、連結の従業員数500人、売上100億円弱の駆け出しの会社です。私が入社当時よりずいぶんと成長しました。東京はホールディング会社で、製造も研究開発もしておらず、株式を保有して中国や米国の子会社を統括するためのバックオフィス業務(財務、経理、人事、IR等)が中心です。
東証マザーズに07年に上場して以来、日本に経営基盤を置きながら、コストの優位性と広大な市場を持つ中国で、薬の研究開発と製造販売を行ってきました。ただ、新薬上市の前には収益がなかったので、長い間赤字でした。
ビジネスの転換点は14年の新薬の上市でした。これによって本格的な製薬会社として発展し、経営も好転しました。17年にM&Aで傘下に入った米国子会社もグループに利益をもたらし、ついに、グループベースで黒字転換を実現しました。おかげさまでコロナ禍の今も、増収増益傾向が続いています。

グローバル人材に求められる力

―グローバルな会社の経理財務組織、人材に求められるものは?

GNIはまだまだ成長中の若い会社ですが、マルチカルチャーの中でダイナミックに進化してきました。その中で8年間関わってきて考えることはあります。
一つ目は、グローバルゆえに、それぞれの国の当たり前があり、それをまたがって財務経理を行うには、まずは明確なルールを示すことが重要です。それが妥当なものであれば、言葉や習慣が異なっても納得してくれる。納得してくれれば、仕事はスムーズに進みます。具体的には、目標は何か、どのように実現するか、誰がどんな役割を担うかという筋道と、それぞれの責任と評価をわかりやすく明確に示せば、みんな理解して協力してくれます。仕組みづくりと言ってもいいかもしれま せん。 
二つ目は、コミュニケーション能力です。GNIは日本をヘッドに、中国・香港・米国に十数社の子会社があります。東京から傘下の子会社を管理するには、情報の吸い上げが必要ですからコミュニケーションは極めて重要です。私自身、つねに改善したいと思っているところであり、非常に鍛えられるところでもあります。寛容さをもって現地の考え方を理解しながら、伝えたいことは伝え、教えて欲しいことを教えてもらう。また、コミュニケーションと言っても、Face to Faceで話し合う場面がやはり少ないので、どうしても電子メールなどの書面のコミュニケーションが多くなります。なので、正確で明瞭かつ簡潔的な文章が書けることが求められます。
三つ目に、やはりしぶとさ、粘り強さが必要だと思います。行き詰った時、諦めず、もう一度やってみる強さは、どのプロフェショナルにも共通して求められる能力だと思います。

―どんな人材と働いていきたいですか。

財務経理の人材という意味では、責任感と緻密さ、正しさにこだわる資質が必要です。それはこれまでも、こらからも変わらないと思います。
成長途上の会社という意味では、自分で仕事の境を作らず、自律的に動き、新しいことにチャレンジする意欲を持ち続ける。そうした人が経営陣にも多く、私もお手本にしています。
一般的な意味では、同じ会社の同僚として、複数の国や文化と関わる中で、「言わなければわかってもらえない」という環境を楽しめる人。あとは柔軟性と寛容な心を持つ人、つまり多様性や異なる考え方を拒絶することなく、会社が向かうべき方向に皆と一致して進めるような人材が力を発揮できると思います。

―最後に読者にメッセージを。

時代が大きく変わっています。ITもAIも財務経理業務を変え、弊社のバイオ医薬も科学技術の恩恵を受けて著しく進歩しています。激しい変化の中でプロフェショナルとして、経験や年齢にかかわらず好奇心をもち、学習して、つねに向上できるよう皆さんと一緒にやっていければと思います。
人生100年時代の中で、「健康に生きる」ことへの寄与が、製薬会社としての使命です。その一助になれればと思っています。

―本日はありがとうございました。