トピックス

トピックス
2022 Mar.

この記事は2022年3月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

困難な状況に共にチャレンジし、
新たなチャンスに繋いでいきたい。

関口 諭氏

関口 諭氏Satoshi Sekiguchi

株式会社ベイカレント・コンサルティング
取締役

慶應義塾大学大学院修了後、マッキンゼー等を経て現職。 ハイテク・通信を中心に新規事業計画立案、デューデリジェンス、オペレーションコストの最適化等に従事。 主な著書に「日本製造業の戦略」(共著/ダイヤモンド社)、「日本企業の進化論」(共著/翔泳社)等がある。

メーカーからコンサルタント、そして経営に

-ご経歴を教えてください。

大学は法学部政治学科で国際政治を勉強していました。研究者の道を考えた時期があり大学院の修士課程に進みましたが、現実を考えて民間企業を選択肢として選び、ITと公共性をキーワードに就職先を探し、日立製作所にお世話になることになりました。 日立には2003年から約5年在籍し、官公庁向けのシステム開発に従事しました。勉強になるところはたくさんありましたが、20代後半でコンサルタントの世界に興味を持ち、マッキンゼーにお世話になることになりました。 マッキンゼーではハイテク系企業の事業戦略、新規事業、海外成長戦略などのテーマを中心に取り組ませてもらいました。とても勉強になり、苦労もしながらも昇進したタイミングで、コンサルティング会社で学んだことを実際のビジネスの世界で試してみたいと思いました。 そこでジョインしたのが当社です。コンサル業務を続けたいというよりも、歴史の浅い若いベンチャー的な当社の将来的な実経営に携われればと考えての転職でした。

-ベイカレント社ではどのようなお仕事を?

2011年に入社した後、2~3年は現場でプロジェクトマネージャーとしてコンサルティング業務に従事しながら、少しずつコーポレート側の業務にも関わるようになりました。採用やトレーニング制度の考案から関わり始め、入社後3年を少し経たタイミングで、ポジションチェンジしてコーポレートの仕事をメインに行うようになり、同じ頃執行役員に就任しています。 以降は採用や人材育成に加え、評価制度等の制度設計やガバナンス、コンプライアンスに関する業務も経験しました。 現在はコンサルティング部門の責任者として、会社の成長につながるヒントやアイデアを拾いながら本社業務に関わりつつ、クライアントとのディスカッションやご報告の場などにも時折、出席させていただいています。今でも自身の原点は現場でお客様と共に汗をかくSEでありコンサルタントだと思っているので、現場の空気感に触れる時間は大切にしています。

閉塞感から、よい意味の危機感へ

-関口さんから見られた日本企業の現状は?

いろんな状況に直面している企業がおられて、ひとくくりに語るのは難しいと思います。ただし、少し前までは閉塞感という重苦しさ、解が見えない中でもがかれている企業が多いという感覚がありましたが、最近感じるのは、悲壮感から一つ抜けて、いい意味での危機感、「このままでは5年後、10年後には、会社がなくなるかもしれない」と経営トップの方が声に出して言うような空気感があるような気がします。 かつては人口1億3000万人の内需のみである程度やっていける企業も多くありましたが、そうはいかなくなっているとどの企業も感じていて、「がむしゃらに頑張らなければまずい」という火の付き方になっているような気もします。「苦労はあれども、未来への希望を失わずに頑張る」という状況だと思います。 一方で成長鈍化と言われつつも数年後には世界一の経済規模に到達しつつある中国や、新興各国の勢いに比し、先進国の中での所得水準が下がってきている我が国の状況も頻繁に報道され、危機感を感じる企業・個人は多い。だからこそ、「違うやり方で起死回生の一手を打たなければならない」という空気感があり、半ば開き直って「ピンチをチャンスに」とポジティブに捉えているクライアント様が多いという印象です。

-今までは閉塞感の中にあると言われながらも動き出す危機感がなかった?

とくに歴史の古い大企業の場合、これまではどこかで「さすがに潰れないだろう」という気持ちはあったと思います。高度経済成長期を経験した方が幹部の大半を占めた過去の日本企業では、コンサル会社の活用の仕方も非常に贅沢で、閉塞感があると言いながら、経営企画部長の勉強のために何千万円かを払ってプロジェクトを行う企業が散見されました。 最近は、コンサルを使って何を得るかをシビアに考え、「使い始めたからには成果を出さねばならぬ」というクライアントの熱量や意気込みが増しており、我々にとってもそれは、大きなやりがいに繋がっています。

現場で共に汗をかく、伴走型コンサルティング

-ベイカレント社の目指すところは?

あまり奇をてらったことを言う会社ではありません。当社の経営目的はクライアント企業の役に立って、収益をきちんと上げて社員の生活を向上させることといたってシンプルです。 一つ目に「クライアント企業の役に立つ」がきているのが重要で、フィーに見合った成果を必ず出さなければならない。過去には「コンサル会社に高い金を払っても成果が出なかった」という批判にさらされてきた側面があるからこそ、しっかりと価値を出す、役に立つ、企業の成長に資する強いこだわりが会社としてもあります。 実際、ビジネスで何かが上向かなければコンサル会社を使う意味がありませんから、役に立つためなら、コンサルティング業務以外でもやりたいくらいでいたいと思っています。 日本企業と仕事をして感じるのは、コンサル会社がくれた答えではなくて、自分たちの試行錯誤を経てひねり出した策であることが、後の推進力や戦略の実行実現性を考えるととても重要だということです。だから、コンサルが調査して答えを出すのではなく、クライアントと一緒に現場で汗をかきながら、議論をぶつけ合い、スパーリング相手になって、悩み抜いて、主役であるクライアントが次の一歩につながる解決策を導くためのサポートをする。それが、我々がいちばん大切にしている価値観です。 加えて、我々が一緒に仕事をさせていただくことで、クライアント企業がいっそうレベルアップしていただけたら嬉しい。「自分たちでできるので、もういいです」と言われれば我々としては本望で、その時クライアント企業がさらに上のステージにいくための別の提案ができるかどうかがコンサル会社に問われるところだと思っています。 伴走型でご支援しつつクライアントのポテンシャルを引き出して、我々は次なる提案をし続ける。そうすると、お互いに高め合い、向上し続けることができます。

これからの人材に求められるもの

-コンサル人材に求められるものは?

コンサルタントはこうあるべきと決めず、多様なスタイルを許容する点が、弊社の特徴ではありますが、今日の話の流れで言えば三つ挙げられます。 一つ目には、成果や価値にこだわること。クライアントの役に立ち、成果が出るところまでしっかりとお手伝いする。そのためにはどんなことでもやりますよ、という本当の意味でのプロ意識が求められるでしょう。クライアントのニーズや成果とは異なる部分での知的好奇心や自分の仕事観で何かを行うのではなく、目の前のクライアントのために何ができるかが出発点であってほしいと思います。 二つ目は、そのために誰かに言われて何かをやるのではなくて、主体性をもつこと。上司と喧嘩ができるくらい、周囲の人間を引き摺り回すくらい、強い信念と行動力を持ってほしい。 三つ目は、少し逆説的ですが、自分の意見を発信しつつも、他の人の意見にもしっかりと耳を傾け、そして何にでも全力投球できる素直さです。年齢や経験を重ねるにつれ忘れてしまいがちなポイントですが、不要なプライドに邪魔されずに人が成長し続けるためには素直な人間であり続けることはとても大事だと考えています。素直でも上司に刃向かえるという、バランスは難しいのですが、兼ね備えた人間は本当に魅力的です。 もちろん最初からすべてそろわなくても、そうした人間になりたいという思いがあり、「そういうコンサルっていいですね」と共感してくださる方であれば、基本的に当社はウェルカムです。

-聞く力の大切さとは、どういうことでしょうか。

当社にジョインしてすごくいいなと思ったのは、若い新卒で入った人たちの話にも経営層がしっかり耳を傾けて、その話を幹部間で話すサイクルがしっかりと回っていることでした。これは聞く力の大切さを示すわかりやすい例でしょう。 大きな組織の中にいると近しい階層の人たちとだけコミュニケーションをとりがちになったり、声の大きい人やその分野の権威の人の意見が通りがちであったりします。「誰が発したか」が大事な側面もありますが、時には「どんな発言があったか」にフォーカスして聞くべきという考えでもあり、「お前のような若い人間の意見なんか聞いてないよ」というのが、昭和的な日本企業の中でもあり得たと思いますが、そういうのを辞めようということでもあります。 人の話を聞かないのは、ある意味、自分の成長機会を逸していることでもあります。どんな人の話もしっかり聞いて、理解して、取捨選択していけばよいのです。

-コンサルに求められている能力は一般企業でも求められている?

基本的にそう考えています。個人の活躍を阻害する組織的な弊害がないことが、我々のような会社が社外の方に自慢できるポイントの一つだと思っています。歴史のある大企業では、個人の能力や経験値とは異なる組織の論理や慣習で、本人の活躍の幅がどうしても制限されることが往々にしてあります。それを取り払えば、コンサルに求められる人材像、つまり汎用性の高いビジネススキルを持つ人材は共通項になり得ると思います。 加えて、若手社員によく話すのは、志や夢を大事にしてもらいたいということです。一人の人間として生まれたからには何か爪痕を残していきたい、少しでも世の中をよくして生を終えたいという志のようなものはとても大事です。単純にお金持ちになりたいとか、いい生活がしたいとか、偉くなりたいとは違うところでの「野心」のようなものを持った人、世の中をこう変えていくのだという気概が求められるのではないでしょうか。

5年後、10年後を見据えて今なすべきことをなす

-就職人気ランキングの上位にコンサルティング会社が入っています。こうした傾向をどう受け止めていますか。

分かりやすい人気企業になるのはメリットもあれば、デメリットやリスクもあります。30年前の人気企業が、ランク圏外というのはよくある話です。他社様が公表されるランキングの様なもの、我々も興味深く拝見しますがあまりそこに一喜一憂すべきではないと思いますし、重要なのは当社として採用したい方々が採用できているか否かです。 昔は全ての入社者が当社の知名度ではなく、当社の中身をご自身の目で見て選んでくれていた。「ブランドや知名度では別の会社のほうが上でも、御社の社員の方々とお話して本物だと思った」と言って入社してくれたのです。今でも優秀な方が採用できていると自負していますが、過度にブランドが上がり過ぎるとノイズが増え、コンサルティングの仕事を十分に理解せず、表面的な印象だけで入社を希望される方も増える。ですから我々は、コンサル人気はどちらかというと注意すべき事象と捉えています。 もちろん当社に興味を持ってくださる方が増えることは非常にありがたいですが、これまで以上に気を引き締めてこの業界・当社でやっていかれる覚悟をお持ちなのか見極めねばならない。今の人気が未来永劫続くわけがないという悲観的な予測のもとで、採用を含む将来の経営計画は立てていかねばなりません。

-新卒、中途でどのくらい採用されていますか?

年によっても異なりますが、2022年4月入社の新卒採用者は約170名で、中途採用は毎月平均50人程度、年間500名以上の方々に入社していただいています。

-コンサル希望の方に伝えたいことは?

今後の日本経済に何かしらの貢献をしたいとか、より不透明感や不確実性が高まっている社会経済環境の中で、しっかりと価値を出し続けて、どんな世の中になろうとビジネスマンとして確固たるポジションを維持して活躍したい方、公私ともに充実した生活をしていきたいかたにとっては、ベースのビジネススキルや世の中をみる大局的な視点を養う環境としてコンサルタント会社は恵まれていると思います。私もそうでしたがコンサルティングの業界に飛び込み最初は苦労したものの、本当に濃密な20代30代を過ごすことができました。少しでもコンサルティングの仕事に興味をお持ちであれば、まずはコンサルティング会社の門を叩き話を聞いてみることをお勧めします。

チャレンジする機会は、人も組織も成長する機会

-混迷の時代に直面する読者にメッセージをお願いします。

チャレンジする機会が多ければ多いほど、個人も組織も成長機会につながります。混迷を極める時代だからこそ、真価が問われます。困難な状況をチャンスに繋ぐために、これまで思いつかなかった取組みや手立てを考えられるよう、同じ志を持つ皆さまと一緒に取組んでいければとても嬉しいです。今後の日本経済、日本社会を一緒に盛り上げていきたいと思います。

-本日はありがとうございました。