トピックス

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2016 Spring

この記事は2016年5月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

ベンチャー企業で
働くということ。

村上未来氏

村上未来氏Mirai Murakami

株式会社ユーザベース
管理担当執行役員 公認会計士

1977年生まれ。慶応義塾大学卒業。町田市出身。PWCにおいて監査実務に従事した後、UBS証券投資銀行本部において消費財・リテールセクターおよび金融法人セクターを担当し、企業の財務戦略アドバイザー業務に3年間従事。その後、KPMGヘルスケアジャパンにおいて、病院や介護セクターのプレイヤーを対象としたM&A アドバイザー、戦略コンサルティング業務に従事。2012年、UZABASEに参画。

専門性を高め、強みを磨く

―これまでのキャリアを教えてください。

大学を卒業した年に、当時の公認会計士二次試験に合格し、監査法人に入りました。将来、会計士の資格を活かして独立したいと考えていましたが、それには強みや得意分野が必要です。まずは様々な分野で、専門性を高めたいと考えました。監査を5年間行った後、M&Aを取り扱う部門に異動し1年間働いた後、投資銀行(UBS証券)への転職を決意しました。M&A領域における専門性を高めたいと考えたからです。
UBS証券ではM&Aを提案する営業活動、M&Aのファイナンシャルアドバイザー業務、資金調達支援などを経験いたしました。投資銀行では週末も含め仕事漬けの日々を送りました。M&Aと資金調達の経験と知識が蓄積されると同時に、顧客に対してプロフェショナルとしてスピード感をもってサービスを提供することを徹底的に叩き込まれた。非常に密度の高い3年間において、M&Aや資金調達のエクセキューションを経験した後、将来的な独立に向け、監査法人時代から興味を持っていたヘルスケア(病院経営)に自分の知識を役立てることはできないかと考え、独立の志を抱きつつ、ヘルスケア分野に特化したコンサルティングファーム、KPMGヘルスケアジャパンに転職しました。
同社では、マネジャーとして、戦略立案に関するコンサルティング、デューディリジェンス業務、市場調査、M&Aファイナンシャルアドバイザー業務といった幅広い業務に携わり、3年が経ち、いよいよ独立の決意を固め、退職することを決意しました。
UBS証券時代の同僚であったユーザベースの新野良介代表取締役から「働かないか」と誘っていただいたのは、KPMGを退職した直後でした。独立という決意をした直後であり、また会社や同僚、友人たちにも声高らかに(笑)宣言していただけに、迷いましたが、世界を目指すユーザベースで一緒に成長してゆけること、また魅力的なユーザベースの経営陣と一緒に働けること、そして同社での経験は、その後の独立を含めた自分のキャリアにおいても、すべて役に立つと思いました。自分が目指す方向性となんの矛盾もなく、自分にとって非常に貴重な経験になると確信し、ユーザベースに入社することを決めました。

経営者と製品への尊敬と共感

―ベンチャー転職で感じることは?

入社して3年、バックオフィス機能がほとんどない状態から会社の成長に応じ、管理オペレーションを一つずつ作り上げてきました。ここでの仕事は、それまでのプロフェショナルファームとは全く違っていました。メンバー全員が、会社の成長という同じ方向を向いて、一生懸命仕事をしていく。その独特の雰囲気によい意味での大きなカルチャーショックを受けました。さらに、クライアントにアドバイスする仕事とは比べ物にならないほどの圧倒的な当事者感をもって仕事に取り組んでいく日々は、いまもなお非常にエキサイティングです。

―具体的にはどんなお仕事を?

何もかも一から作り上げていかなければなりません。海外進出、複数回にわたる投資家や銀行からの資金調達、予実管理の仕組み作り、新規事業のスタート、会社分割、ストックオプション制度の設計、内部統制構築、単体の財務諸表から連結の財務諸表作成……、と挙げればきりがありません。一つひとつチームメンバーと共に考え、構築し、次のイベントに向き合っていく。
会社は、創業以来売上高が毎年50パーセント以上の成長を続けてきました。「経済情報で世界中の意思決定を支える」というミッションを掲げて、世界一の経済メディアたるグローバル企業を目指して、対法人(SPEEDA)でも対個人(ニューズピックス)でも、ワンストップで経済情報を提供するプラットフォーム提供したいと思っています。会社にいてもプライベートな時間においてもビジネスパーソンにとって、なくてはならない経済情報源という存在でありたいと考えています。そうしたものは、今どこにもないと思っています。

―ベンチャーで働く上で大事なことは?

経営者のミッションと製品に共感できることは非常に重要です。私もそれが大きかったです。オーナー色の強いベンチャー企業では、管理部門やCFOが「社長にブレーキを掛けるのが大変だ」という話をよく聞きます。しかし、当社の場合は社長自らが、「もしトップが暴走しそうになったら、それを止めるのが管理部の仕事だ」と語るほど、ガバナンスに対する考え方が深い。自分の会社のリスクを突き詰めていけば、そういう考えになると思います。何か事故が起これば、そこで成長は止まり、その先の目的が達成できません。そうした理解ある経営者を非常に尊敬しています。

今、全力を尽くす。それが次につながる

―これまでの経験を踏まえてのキャリア観とは?

今の仕事に全力を尽くし、そこで得られる経験を積み重ねることで、次のキャリアが開けていく―自分の過去を振り返ったとき、そのことを強く感じています。今の仕事が次にどうつながるか。それを自分なりに解釈し糧にすることにより、キャリアが形成されてゆくのだと考えています。今までの経験を生かすも殺すも、結局は自分次第ということかもしれません。

―ベンチャーへ転職を考えている人にメッセージをお願いします。

実体験こそが自分の財産です。ベンチャーで得られる経験を、実体験として語れるだけで確実にマーケット価値は上がります。ベンチャーで成功する企業は僅かであるといった話がありますが、それは関係ありません。たとえ会社が潰れても、そこでの経験が否定されることはありません。ことに若い人は、その先のために得られる経験を考えるならなおさらです。経営者と製品に共感できるベンチャーに出会えたとき、迷わずチャレンジしていただきたいと思います。「迷ったら挑戦する道を選ぶ」(ユーザベースの七つのルールの一つ)です。

―ありがとうございました。