トピックス

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2017 Autumn

この記事は2017年11月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

働きかた改革・人材不足を
柔軟にサポート
経理アウトソーシングのススメ

松田賢一郎

松田賢一郎Kenichiro Matsuda

JBA税理士法人
理事長 公認会計士 税理士

1989年中央新光監査法人国際部(Coopers&Lybrand)入所。中央監査法人ニューヨーク事務所を経て、2006年ジャパン・ビジネス・アシュアランス株式会社にマネージングディレクターとして参画。JBA税理士法人理事長。公認会計士、税理士、早稲田大学会計大学院非常勤講師。

企業規模の大小を問わずここ数年、経理業務のアウトソーシングのニーズが急増している。なぜ、今、経理のアウトソーシングなのだろうか。
会計基準の変化に伴って、有価証券報告書等、会計への要求が高度化している。経理業務が高度化し、さまざま要求が増える中でも、経理財務の人員を増やすことはどこの会社でも極めて難しい。そうした状況の中で、「企業内の優秀な人材を定型業務に使わなくてもよいのではないか」という世界的な流れ、つまり欧米企業や一部の先進的な日本企業で活用されてきたシェアードサービスやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が、自前に固執していた日本企業の中でも広く求められるようになっているのである。

外部の力を活用して人材不足・人手不足解消+αを手に入れる

多くの大企業では、「伝票起票やデータ入力といった定型業務は外部に委託して、分析や管理会計に繋がる仕事に社内の優秀な人材は回したい」と、おっしゃる。これはアウトソーシングの定番的な用い方である。大企業も経理財務は少数精鋭で行っており、仕事にも波がある。できる人に負担がかかり「3日帰っていない」という話もよく聞く。アウトソーシングをピーク時だけに使えば、本人の負担だけではなくコストも減ってくる。

図表

中小企業では、人材確保の難しさという深刻な課題もある。中小規模の上場会社では、「有価証券報告書の作成までできる人材が内部で育たない」「高額の人件費を支払って採用してもすぐにやめてしまう」というジレンマを抱えており、安定的な経理サービスを提供し続けることは内部ではかなり難しい。いま、アウトソーシングのニーズが最も高いのもこの辺りだ。外資企業の日本子会社となると、英語によるコミュニケーションが求められ、さらに人材確保のハードルは高くなる。外資系の場合は、経理業務を丸ごとアウトソーシングするケースも多い。
AIの活用がさらに進んでくると、税理士業務や経理従事者は不要になるという話もある。方向性はわかっていても、人も組織も一挙に変わるのは難しい。変革の橋渡し役として、転換点の土台作りとしてアウトソーシングを使うという考え方もある。会計そのものが難しくなってきているので、人間の判断は必ず必要だ。しかし、データ処理に関しては、社内で人が行うべきではないというのは、働きかたの側面から見ても、一つの大きな潮流となっている。
外部を入れることで、けん制が効きやすいというメリットもある。間違いなく共謀しづらくなるし、外からだから言えること、見えることがある。中小の会社になると、一人で行ってはならない業務を一人で行っている場合もある。そうした業務をアウトソーシングする。不正防止や管理の徹底には、確実に効果がある。

上手にアウトソーシングを使うための3つのポイント

Point1 過去のやり方にこだわらない

従来の会計システムと最新の会計システムはソフトの発想が全く異なる。今までは一つの取引について、伝票起票してデータ入力するプロセスの中で間違えるタイミングが複数あった。しかし、最新の会計ソフトは、銀行データを取り込んでAIで学習させて処理する。例えば、A社からの入金はこの勘定科目でこの処理だと決まっているのであればすべて同じ処理にする。同じ処理は間違えないから、チェック等の時間も不要になる。
会計アウトソーシングでは、最新の会計ソフトを使ったデータ処理で正確性と迅速性、低コストを実現する。結果、社内の業務プロセスも変化する。過去のやり方にこだわっていては、アウトソーシング活用がうまくいかないだけでなく、新しいテクノロジーのキャッチアップに遅れをとり社内業務効率化のチャンスを逃すことになる。

Point2 人員の再配置を考慮する

アウトソーシングのメリットは、業務内容に合わせた能力の人員配置ができることにある。日本の会社では一人の人が複数の仕事を担当していることが多い。その中には、能力相応の仕事だけでなく、単純作業、定型業務が少なからずある。そうした部分をアウトソーシングすることで、その人の能力に応じた他の業務に再配置が可能になる。
どこをアウトソーシングするかという検討と同時に人員の再配置の検討は不可欠である。

Point3 アウトソーシングの業務領域を明確に定義する

どこからどこまでをアウトソーシングするのか。その線引きをはっきりと決めて、アウトソーシングする側、受ける側の双方で共通の理解を得ておかなければ、現場では調整が難しい。
例えば、伝票入力業務をアウトソーシングする際、渡す伝票が正しいかどうかをチェックするか、しないかを決めておく。細かなことだと思われるかもしれないが、これをやっておかないとトラブルのもとになる。チェック漏れが生じたのでは正確性が担保できないし、間違いが生じたときの責任問題にもなる。
社内の担当者が変わることで、正確性のレベルが変わるケースも多い。Aさんがやっていたときは正確だったのに、Bさんに代わったらしばしば間違いがあるというケースだ。チェックがアウトソーシングの業務領域に入っていないとき、間違いを見つけた現場は、「どうすればいいでしょうか。指摘すべきでしょうか」となってしまう。
詳細な事柄をすべて契約書に取り込むことはできないので、意思疎通をしっかりと行って線引きをきれいにしておきたい。アウトソーシングを受ける側が、そうした細かな勘所を周知しているかどうかもハッピーなアウトソーシングにするための条件の一つであろう。

多様なニーズに専門家集団がカスタマイズで応える

JBA税理士法人では、経験の蓄積によって、どこでトラブルが発生しやすいかを把握し、料金は取引数量×単価で計算する従量制をとっている。取引が少なければ安く、多ければ高くなる。納得性が高く、わかりやすいとお客様にも好評である。多様な経理業務のどの一部分でも、経理を丸ごと引き受ける”CFOサービス”でも、会計の専門家集団ならではのクオリティの高いアウトソーシングを提供できる。ちなみに英語にも対応できるので、外資系企業の日本法人のご利用も多い。外資系はほとんどフルパッケージのCFOサービスを利用していただき、社内の経理部員ゼロで運営している会社も少なくない。CFOサービスは毎月、社長に財務報告を行い、見たい数字を出して、その場で疑問にもお応えし提案も行う。
伝票起票から会計システムへの入力、支払業務、経費精算、売掛金のチェックという日常の経理業務全般、さらにレポーティングまで会計系のアウトソーシングニーズは企業によってさまざまである。ぜひ、自社に最適なアウトソーシングサービスを上手に活用して、人手不足・人材不足時代の働きかた改革に上手に対応していただきたい。