トピックス

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2018 Winter

この記事は2018年2月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

自社事業の深い理解と
キーパーソン把握に努める。

伊藤十話氏

伊藤十話氏Juwa Ito

株式会社アクティブ アンド カンパニー
グループデザイン本部 マネジャー

1973年、神奈川県生まれ。97年中央大学卒業、(株)光通信入社。経理部にて資金管理、投資管理、個別決算業等に携わる。2001年(株)日立製作所入社、情報通信グループ財務本部財務部にて、グループ業績管理、税務会計対応などグループ業績のまとめに携わった後、04年よりRAIDシステム事業部RSD・SSD経理部にて製品損益管理、原価計算管理、内部統制導入対応、移転価格対応等に携わる。2009年(株)カプコン入社、財務経理統括財務部財務チーム副部長、経営企画統括経営企画部部長を務める。2015年(株)鉄人化計画入社、経営企画部長、T・Rプロジェクト推進部長、社長室長を務める。2017年アクティブアンドカンパニー入社、現在に至る。

キャリアを積み重ねる中で学んだこと

―ご経歴を教えてください。

高校生の頃、会計士の伯父の影響で会計士の仕事に興味を持ちました。会計士を目指して商学部会計学科に入学したのですが、残念ながら2度試験に失敗。それでも会計の仕事に携わりたいと思い、卒業した年の9月、光通信に入社。経理部で買掛管理等の事務からスタートしました。いちばん勉強になったのは、出納担当で借入の契約書や社債発行のバックヤードの仕事に携わる中でのやり取りでした。当時、証券会社や会計士の方々に直接向き合わなければならず、自分で考え、自分で動かざるを得ない状況でした。誰に何を聞けば、ものごとがどう動くのか。そのことを実務で学ばせてもらいました。このことは、私の仕事人人生の中で非常に役立っていると思います。
入社して4年が過ぎた頃、転職を考え始めました。大手メーカーから転職してきた人の仕事ぶりや立ち居振る舞いを見て、「自分は応用はやってきたけど基礎がない」ことを痛感していた私は、「基礎を学ぶにはメーカーが適」と思い、メーカーへの転職を考えるようになりました。日立製作所への転職が一つ目の転機でした。

―第二の職場で学ばれたことは?

日立製作所では最初の2年半を情報通信グループ財務本部で、事業部経理と本社経理との橋渡しの仕事をしました。予算業務に初めて携わり、先を見る仕事の難しさ、面白さを知りました。当時の上司に、「自分で現場に行って聞いてこい!」と、現場に入り込むことの大切さを叩き込まれました。次に配属になった事業部経理では、開発から製品化、値付け、原価計算といったモノづくりのすべてを勉強させてもらいました。各部署の人たちと話しながら、最適解を考えていくという仕事の進め方を経験したことも貴重でした。開発に経理の人間がやって来ると、「予算を削りにきた」と嫌がられるのですが、製品について教えを乞うと彼らは喜んで話をしてくれました。そうすると、原価低減の話にも知恵を出してくれるのです。現場を知らずにモノを言うのと、現場をわかって言うのとでは大きく違う。そのことを実感しました。現場に行かなければ何の情報もとれないし、受け入れてもらえない。当時の上司もほとんど席にいることはなく、机の前に座っていては経理の仕事はできないことを教わりました。

―その後、ゲームソフト会社に転職されました。

事業部に異動して約4年、ちょうど開発から製品の発売までワンサイクル終わって、モノづくりの全体像がわかってきたころ、大企業の中での自分の立ち位置がわからなくなっていました。リーマンショック後の不安定さが影を落としていた時期でもありました。もともと大企業志向は強くなく、経営者の近くで仕事をしたいという学生の頃からの思いも持ち続けていました。
カプコンでは財務のフロントに立たせてもらいました。銀行との借入交渉や格付け会社とのやり取りを担当し、内部統制的なけん制機能の整備も当時の部長と共に進めました。2年後、経営企画部に異動となり、最初の仕事が他社との提携交渉でした。外部との交渉という、新たな経験をさせてもらいました。カプコンでは、海外子会社の取締役として海外子会社管理に直接携わることもできました。また、経営企画が主管していた経営会議を通じて、経営者の考え方をどう捉えるか、実現するために誰がどう動かなければならないかを勉強させてもらいました。

―転職の都度、新しい経験を積まれてきた。

そうですね。ただ経理部長の経験がありませんでした。家庭の事情でカプコンを退職するとき、上司から「経理部長をやってから辞めたほうがいい」と言われ、悩みました。結局、カプコンを辞して大阪から東京に帰り、鉄人化計画で新規事業担当という事業部経験を始めてさせてもらいました。

人事部門の効率化が組織の存亡を左右する

―現職への思い、やりがいは?

人事部門はこれまでいつも私の仕事の真横にありました。人事がどういうものかわかっていたし、「こうあって欲しい」という思いもつねにありました。弊社代表と会って話したとき、「これは本当に面白い!」と、新しいHRの可能性に惹かれました。IT化、AI化が叫ばれ続ける中で、人事部門は手つかずのアナログ的な要素を多く残す部門です。そこにテクノロジーを取り入れていこうという考え方と取り組みに、共感を覚えました。今後、少子化で人財の採用はますます困難になります。人事業務を作業から戦略性の高い企画業務に転換していくため、人事情報管理などはシステム化し、労働集約的な仕事はアウトソーシングするなどして、本来すべき採用や教育、離職率低下に注力していかなければ、会社の存続が危うい時代が来るでしょう。わかってはいても、中規模以下の会社では難しい部分もあると思います。そうした会社をいかにサポートしていくかが、我々の課題だと思います。

いちばん重要なのは”意識づけ”

―経理財務部門の責任者としての役割はどうお考えですか

今後、株式公開へチャレンジしていく中で、成長とコストに見合った管理部門づくりに向けて先手を打っていくのが私の役割だと思っています。組織づくりも大事ですが、いちばん重要なのは意識づけだと思います。プロフィットを生み出す部隊に対して何を提供すればいいか、いかに働きかけるかを管理部門の一人ひとりが考えることができる。一方で、言うべきこと、統制すべきことはあります。両者のバランスがとれる人財を育てていけば、自然と管理部門自体がよい部隊になるのではないかと思います。

―これからのキャリアづくりについてメッセージをお願いします。

管理部門の世界で生きていこうとするなら、知識や専門的なスキルも必要ですが、それ以上に自分の会社の事業を深く知ることと、組織の中で誰がどう動いているかを把握できることが重要です。私もまだまだ足りないところだらけですが、いつもそこを心掛けるようにしています。

―本日はありがとうございました。