トピックス

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2018 Spring

この記事は2018年5月発行の「JBA JOURNAL」に掲載されたものです。内容及びプロフィール等は掲載当時の情報となります。

考え切る力、巻き込む力が、
人材力のブレークスルー
を生む。

八重樫 健氏

八重樫 健氏Ken Yaegashi

Syn.ホールディングス株式会社
経営戦略本部 本部長

Syn.ホールディングス経営戦略本部 本部長
Supership事業戦略室 室長
Syn.HD/Supershipでは、経営戦略、M&A、コーポレートファイナンス、事業戦略と幅広い業務に携わる。大学在学中公認会計士2次試験に合格後、学生時代は公認会計士として監査法人に従事。大学卒業後はアクセンチュアに入社し、経営戦略、M&A、新規事業立上、マーケティング戦略立案、デジタル化支援などのコンサルティング業務を経験したのちにSyn.HD/Supershipに入社。

正しいと思うことを相手にぶつけ切る

―ご経歴を教えてください。

大学3年で公認会計士試験に合格し、大学3、4年生のとき、非常勤として監査法人で監査業務に従事しておりました。監査は経済のインフラを支える非常に重要な仕事ですが、基本的には、過去の結果のレビューが中心であり、未来を作っていくものではありません。実際に働く中で、自分の能力を最大限に活かして、社会に貢献できるのは、事業やサービスを創り出していくほうだと感じました。そこで、新卒でコンサルティング会社である、アクセンチュアに入社しました。コンサルティング会社を選んだ理由は二つあり、一つは、領域や業界をまたいで、様々な業務にチャレンジすることで、自分の本当にやりたいことを見つけること。もう一つ、自分がやりたいことを見つけたとき、それを実現するためのスキルを身につけておきたいと考えたためでした。今振り返ってみて、この選択は自分にとっては間違っていなかったと思っています。
コンサルティング会社で得られた経験としては、まずは、クリティカルシンキングやロジカルシンキングといった、思考の基礎が身についたことです。これらはビジネスを行う上で非常に重要な、「イシューを特定する」際に役立ちます。また、顧客と膝を付け合わせながら問題解決を図っていく人を巻き込む力も身につきました。また仕事に対する姿勢についても、入社1年目から上司に繰り返し言われたのが、「クライアントからいただいている報酬の何倍もの価値をクライアントに提供していかなければ、クライアントとしてROIが合わず、お金を支払ってもらっている意味がない」ということでした。そうした環境の中で5年間仕事をすることで、「自分の仕事が価値提供できているか」という観点で常に自分の仕事を見ることができるようになりました。
アクセンチュア時代、KDDIの新規事業や全社的なプロジェクトに約2年程関わらせていただき、その中の最後のプロジェクトが、現在所属しているSyn.ホールディングスを立ち上げるためのプロジェクトでした。コンサルティング会社の人間として支援する立場から、クライアント側に転職する機会をいただいた時、考えたことが二つあります。一つは、コンサルティング会社は最終の意思決定権は持っていないということ。もう一つは、会社としてプロジェクトのリスクをとるケースは少ないということです。自身のスキルを磨いていく上で、意思決定の質と数は極めて重要ですし、途中まで自分が作ってきた事業にフルコミットして、自分でリスクをとって仕事をしたいという思いがあり、転職を決意しました。

―転換点と感じたのは?

常にフラットな天秤で考え、正しいと思うことを、相手にぶつけ切れるようになったことでしょうか。クライアントからの依頼を忠実に実行するだけでなく、”真のクライアントのための価値”を考えて、「こちらのほうが素晴らしい」という提案を行って、相手を説得することも必要です。クライアントの現状や業界の状況を踏まえて、舵を切るべき方向を自分の中で考え抜いて、それが正しいと思えば、相手が腹落ちできるまで膝詰めで議論をしていく。戦略を作るときも、クライアントを巻き込んでクライアント自身を変えていくところまでやらなければならない。クライアントが一緒に同じ方向に向かって動いてくれ、成果が創出できたと感じた時が最も大きなブレークスルーだったという気がしています。

―転職されて感じた変化は?

仕事を仕事として捉える感覚がなくなったような気がします。コンサルティング会社時代もやりがいある仕事を任せてもらいましたが、それは「仕事として」捉えて、進めていました。それが、事業会社に来て、「会社として成長するためにどうすべきか」と考えることが楽しくてしかたないです。仕事とプライベートが分断しているという感じではなくなって、プライベートでも「今の仕事をよくするには」「チームをよくするには」を考えていて、会社の成長と自分の成長が一体化していると実感しています。

考えることが好きな人 考える手法を持っている人

―今の職場で目指すところは?

親会社であるKDDIでは、従来は今いる顧客に対する付加価値の向上に戦略的にフォーカスしていましたが、数年前から顧客数アップが次の課題となっています。KDDIの国内でのオープンインターネット領域における事業拡大を推進するための企業が我々、Syn.ホールディングスです。インターネット領域で戦っていくために一線を張っているインターネット事業者やスタートアップ企業と共創し、価値を生み出していく。それが我々の仕事です。
我々は、「大企業×スタートアップが共に作る共創の成功事例を作りたい」と思っています。大企業が社内においてイノベーションを起こすことは非常に難しい。一方でスタートアップの出口は日本ではIPO(株式公開)がほとんどです。しかし米国をはじめとした海外では、M&AはIPOと並ぶスタートアップのポジティブな出口になっている。この大企業×スタートアップの共創における日本初の成功事例をつくることで、大企業における新たなイノベーションや、出口の拡大によるスタートアップ業界の活性化に貢献したいと思っています。こうすることで、もっと我々を模倣する形が創出され、大企業側から、またスタートアップ側から日本を元気にすることに貢献していきたいと考えています。
事業としては現在インターネット広告関連事業が大きくなっていますが、会社のコアは、広告事業や自社サービスで得たデータです。このデータを元にデータマーケティングやテクノロジー等の領域において、コンサルティングからソリューション提供、施策の実行までトータルでクライアントに提供していく方向にシフトしていっています。規模としては1000億円規模の企業価値がまず1歩目の目標になると考えています。

―キャリアアップを目指す人にメッセージをお願いします。

自分で考えることが楽しいと思える人。困難や課題にぶつかったとき、できない理由を探しに行くのではなくて、どうやればできるかを考える手法を持っている人と一緒に働きたいですね。そういった思考力のある人であれば、専門知識は一周回せば身につくのではないかと思います。
さらに、自分の考えを自分でつくり上げて、それを実行に移していくことがとても大事だと思います。そのために人に動いてもらうにはどうするか。最終的には「人を動かす力」が、いちばん大事だと思います。

―ありがとうございました。